第11回多摩大学サステナビリティ経営研究所セミナー第51回 資本主義の教養学講座

「分断の時代の生き方:アダム・スミスのイギリス型資本主義への処方箋」

アダム・スミスは18世紀のスコットランドというイギリスの一地域に生きた経済学者である。スミスの時代は貿易戦争が深刻であったが、それは市場経済が広まったことによるものだった。この対立・戦争をスミスは深刻に認識していた。貿易戦争のみならず、イギリスの政党対立は深刻であったし、スコットランドでの宗派間対立も深刻だった。このような対立の時代にどう生きるべきか、スミスはそのことを考え続けた。一般的に、『国富論』は、経済的自由主義の基礎となったとされる。市場システムを円滑に機能させるかという社会科学的議論の発端にスミスはなった。また、スミスが提唱した市場システムは、イギリスで発達し、日本をはじめ各国に導入された。経済学的には相互繁栄を導くとされる市場システムであるが、実際にはスミスの時代から現代まで市場システムは対立・戦争を招いてきた。スミスは、市場システムには対立を招く点があることを認識していた。そして、その処方箋として、『道徳感情論』において、個人の生き方・幸福をもスミスは探究した。それは市場経済で生きる人間の幸福を考えるもので、対立の時代の振る舞いにも関係した。この点は、分断と対立の時代である今日の社会での生き方を考える上でも参考になる。

■セミナー概要■

【日 時】 2025年10月30日(木) 18時30分〜20時00分

【方 法】 Zoom

【講演者】

野原慎司 東京大学大学院経済学研究科准教授

東京大学大学院経済学研究科准教授。専攻:経済学史

京都大学大学院経済学研究科経済システム分析専攻修了、京都大学博士。

日本にも明治維新以後導入された経済システム(自由競争と市場メカニズム)の起源をつくったのはアダム・スミスだが、その背景にあるスコットランド啓蒙という歴史的文脈がわからないまま、システムを使い続けることに違和感がある。スミスとスコットランド啓蒙,スコットランドの市場システムの歴史的・道徳哲学的背景も研究している。著書に、Commerce and Strangers in Adam Smith (Springer, 2018)、『経済学史:経済理論誕生の経緯をたどる』(日本評論社 2019)、『アダム・スミスの近代性の根源―市場はなぜ見出されたのか』(京都大学学術出版会 2013)などがある。

【司会】

堀内 勉  多摩大学サステナビリティ経営研究所所長

東京大学法学部卒業、ハーバード大学法律大学院修了、Institute for Strategic Leadership(ISL)修了、東京大学 Executive Management Program(EMP)修了。日本興業銀行、ゴールドマンサックス、森ビル・インベストメントマネジメント社長、森ビル取締役専務執行役員CFO、アクアイグニス取締役会長等を歴任。現在、ボルテックス取締役会長、100年企業戦略研究所所長、田村学園理事・評議員、麻布学園評議員、アジアソサエティ・ジャパンセンター理事、社会的投資推進財団評議員、立命館大学稲盛経営哲学研究センター「人の資本主義」研究プロジェクト・ステアリングコミッティー委員、日本CFO協会主任研究委員等を務める。