【講演概要】第 5回サステナビリティ経営セミナー 「幸福のための税制改革」

2024年11月26日(火)の本セミナーでは、「幸福のための税制改革」をテーマに井手英策慶應義塾大学経済学部教授をお招きし、講演頂きました。以下に、概要を紹介いたします。

■ 登壇者

・井手 英策 慶應義塾大学経済学部教授

・堀内 勉 多摩大学サステナビリティ経営研究所所長

■講演概要

・「幸福のための税制改革」を研究する背景

冒頭、井手氏は自身の経歴と研究背景について説明し、貧しい家庭の出身で3度の死の危機を乗り越えたことや、恩師との出会いが研究者としての道を開いたことについて語られた。氏の研究の根底にある哲学は「弱者を助けるのではなく、弱者を生まない社会を作ること」であり、これがベーシックサービスという考え方につながっている。また、これらの経験と哲学は、本日の講演内容である「幸福のための税制改革」や資本主義の転換期における財政改革の議論にもつながっているとのことだった。

・ベーシックサービスの概念について

ベーシックサービスとは、医療、介護、教育などの必要不可欠なサービスを所得制限なく全ての人に無償で提供する考え方であり、「弱者を助ける」から「弱者を生まない」社会への転換を目指すものである。この考え方は政党や地方自治体で取り入れられている一方で、ベーシックサービスの実現には税制改革が必要であることも強調された。

・途上国化しつつある日本社会の現状

世帯収入の減少、貯蓄がない世帯の増加、一人当たりのGDPの低下などを具体例として挙げ、日本社会が途上国化しつつあると指摘。また、弱い立場の人々への寛容さの欠如や、インフレ対策としての財政政策の問題点にも触れ、根底から社会を作り変える必要性を訴えた。

・「ライフセキュリティ」の提案

最後にベーシックサービスとディーセントミニマム(医療、介護、教育などの基本的サービスを所得制限なしで提供)を組み合わせた「ライフセキュリティ」の概念が紹介された。これにより中間層の生活安定と低所得層への寛容さを引き出すことが可能になり、救済の領域を最小化し、人間の尊厳を平等にする効果があるということだった。

ライフセキュリティの社会を実現するための具体的な施策としては、大学無償化や医療費の自己負担廃止などに必要な財源として消費税を6%強増税する考えも紹介された。なお、この変更は国民の負担を増やすのではなく、社会のあり方を根本的に変えることで、格差を縮小し、消費を促進する可能性があることも付け加えられた。

(写真:井手 英策 慶應義塾大学経済学部教授)

【セミナー後記】

「徹底的して論理的に考えなさい」と教えられた井手氏が考え抜いてたどり着いた考え方だけに、「ライフセキュリティ」が実現すれば日本は変わるのではないかと思える、非常に説得力を感じる講演内容でした。井手氏自身「売れない演歌歌手のように全国をまわり講演を続ける中で、10年にだんだんと浸透しているのを感じている」とお話されており、私も正しく理解し、広める側として協力したいと思いました。(事務局 千葉)